2025年6月7日(土)に名城大学ナゴヤドーム前キャンパスにて行われるJACET 中部支部大会の講演及びシンポジウムの情報が出揃いました。
テーマ:Instructed Second Language Acquisition:日本の教室で、何がどこまでできるか?
基調講演
タイトル:ISLA研究の知見を活かした英語授業デザイン:3つの視点から(鈴木 祐一)
大学の英語教育をより良くしたい―これは多くの教員が共有する願いです。その手がかりとなるのが、生徒の英語学習プロセスを科学的に解明しようとする第二言語習得(SLA)研究です。特に教室での指導場面に焦点を当てたInstructed SLA(ISLA)研究からは、私たちの授業実践に活かせる興味深い知見が次々と生まれています。私自身、大学で一般英語から専門科目まで様々な授業を担当してきましたが、その経験の中でISLA研究の知見が授業改善に大きな示唆を与えてくれました。この経験をもとに、最新の研究成果をどのように授業に活かせるか、みなさんと考えたいと思います。
本講演では、近著『あたらしい第二言語習得論』(研究社)をもとに、ISLA研究の知見を英語授業にどのように活かせるかを探ります。授業デザインに役立つ3つの視点として、(1)英語指導における優先順位(語彙・文法・発音)、(2)教室での教師の役割(協同学習の活用、ライティング添削の方法、学習者の個人差への対応)、そして(3)制約下での英語教授法(タスク・ベースの指導法、CLIL、練習の役割)を取り上げます。これらの視点から、最新のISLA研究と実践の関わりについて議論します。
鈴木 祐一(早稲田大学 准教授)
早稲田大学国際学術院・国際教養学部准教授。東京学芸大学教育学研究科(英語教育)修士課程修了後、メリーランド大学カレッジパーク校でPh.D.(第二言語習得)取得。Studies in Second Language Acquisition, TESOL Quarterly, Applied Psycholinguisticsなど国際学術誌の編集委員を務める。主著に、『あたらしい第二言語習得論:英語指導の思い込みを変える』、『英語学習の科学』(ともに研究社)やPractice and automatization in second language research: Perspectives from skill acquisition theory and cognitive psychology(Routledge)がある。詳しい研究・実践は、個人HP(https://yuichisuzuki.net/)を参照。
シンポジウム
タイトル:第二言語習得研究の理論と実践-中・高等学校の教室からー(鈴木 渉)
第二言語習得研究は、研究に基づいて第二言語に関する教室実践を改善することを目指し、理論と実践の往還を追求しています。このシンポジウムでは、英語教育の教室実践の質を向上させるための二つの異なる研究アプローチを紹介します。第一のアプローチでは、大学の研究者と現場の英語教師が協力し、共同で実践研究を進めるケースを見ていきます。具体的には、中学校における英作文の筆記訂正フィードバック(written corrective feedback)に関する研究を紹介します。第二のアプローチでは、英語教師が大学院で第二言語習得研究を学び、自ら実践研究に取り組むケースを探ります。具体的には、高等学校における筆記ランゲージング(written languaging)に関する研究を紹介します。これら二つのアプローチに基づく研究を具体的に紹介しながら、本シンポジウムを通して、第二言語習得研究が、日本の教室で何をどこまで達成できるのかを皆さんと一緒に考えたいと思います。
鈴木渉(宮城教育大学 教授)
宮城教育大学教授。宮城教育大学を卒業後、カリフォルニア大学サンタクルーズ校留学を経て、東北大学大学院教育学研究科で修士号、トロント大学オンタリオ教育研究所にてPhD(教育学)を取得。専門は、第二言語習得、英語科教育、特に、日本人が英語を教える・学ぶについて、実証的に研究している。『実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導』(編著、大修館書店)、論文多数。(https://researchmap.jp/watarusuzuki)
タイトル:対話システムを用いた英語スピーキング練習プログラム(鈴木 駿吾)
大学における英語教育は、学習者一人ひとりが異なる目的を持ちながら学ぶ場であるといえる。学生は、自身の専門分野や将来のキャリアに応じて、アカデミックな場での英語や、国際的なビジネスシーンで通用する英語を身につけたい者など、さまざまなニーズを持つ。しかし、従来の大学の教室指導だけでは、こうした多様な目的に対応しつつ、一人ひとりに最適なスピーキング練習機会を提供することが難しかった。そこで注目されるのが「個別最適化」されたスピーキング学習である。近年では、人間と同様に自然な会話が可能な「対話システム」の英語教育への応用が期待されている。音声認識などのAI技術を組み合わせて、会話練習相手を再現しようとする取り組みである。また説明可能なAI技術を用いて、自動採点結果を学習者の学びに活用できることも期待されている。そこで本発表では、大学での英語教育における個別最適化された学びを目的として、対話システムを用いた英語スピーキング練習プログラムの効果検証研究を紹介する。AI駆動型練習プログラムの利点と限界点を議論しながら、これからの大学における教室指導の役割を考察する。
鈴木駿吾(名古屋大学 准教授)
名古屋大学大学院⼈⽂学研究科准教授。ランカスター大学言語学研究科・早稲田大学教育学研究科それぞれにて修士課程を修了後、ランカスター大学同研究科にてPh.D.(言語学)を取得。その後、早稲田大学にて、NEDO「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」における、会話型自動スピーキングテストの開発プロジェクトに関わる。プロジェクトの事業化に伴い、2022年5月からプロジェクト終了まで研究代表者を務めた。専門は、第二言語発話産出のメカニズムやスピーキング能力評価。現在、Annual Review of Applied Linguisticsの2025年号のGuest Associate Editorを務める。(個人サイト:https://shungosuzuki.wordpress.com)

