
Table of Contents
No. 56
- 支部長挨拶 第40回中部支部大会のご案内 ―『越境』をテーマに、大学英語教育のその先を考える
- 2025年度 第2回定例研究会報告
- 基調講演「クロスメディアを活用した学習研究の紹介」
- 研究会報告 【授業学研究会】
- 掲示板:2026年度『JACET中部紀要』紀要原稿募集
- 事務局より
- 2026年度支部大会のお知らせ
- 2026年度定例研究会のお知らせ
- 新入会員のご紹介
- 2026年度中部支部役員(敬称略)
- 転居・メールアドレス変更時につきまして
- JACET 中部支部事務局
第40回中部支部大会のご案内
―『越境』をテーマに、大学英語教育のその先を考える
支部長 藤原 康弘(名城大学)
支部会員の皆さまにおかれましては、日頃より中部支部の活動にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび、2026年6月27日(土)に、第40回という節目を迎える中部支部大会を、名城大学ナゴヤドーム前キャンパスにて開催いたします。大会テーマは、「越境する言語使用と異文化間コミュニケーション ― 大学英語教育を超えて」です。実社会で営まれる英語使用の多様性に目を向け、大学英語教育の成果と限界をあらためて捉え直し、その先を展望する機会としたいと考えております。
基調講演には、『異言語間コミュニケーションの方法—媒介言語をめぐる議論と実際』(大修館書店)、『節英のすすめ―脱英語依存こそ国際化・グローバル化対応のカギ!』(萬書房)などの著作で広く知られる木村護郎クリストフ先生(上智大学外国語学部教授)をお迎えし、「異言語間コミュニケーションの多様性とその中での英語の役割」と題してご講演いただきます。続くシンポジウムでは、株式会社メルカリにて多文化・多言語組織における言語教育を主導されている親松雅代氏、ならびにELF(共通語としての英語)研究の第一線でご活躍の鈴木彩子先生(玉川大学)をお招きいたします。産業界の実践と大学英語教育の応答を往還させながら、AI時代における言語教育のあり方を立体的に議論する、またとない場となるはずです。
なお、本大会は日本「アジア英語」学会(JAFAE)との共催企画として実施いたします。翌6月28日(日)には、同会場にてJAFAE全国大会も開催されます。両大会を通じて、大学英語教育を基盤とするJACETと、英語の多様性・国際的使用を研究対象とするJAFAEの知見が交差し、学術的な連続性と参加者間の交流がいっそう深まる機会となるものと期待しております。
理論・実践・教育の三つの視点が交差する本大会は、まさに「越境」の名にふさわしい場となるはずです。会員の皆さまにおかれましては、ぜひ会場まで足をお運びいただき、登壇者および参加者との対話をお楽しみいただければ幸いです。多くの皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げます。
大会の詳細につきましては、下記の各ホームページをご覧ください。
JACET中部支部大会:https://jacet-chubu.org/convention/
JAFAE全国大会:https://jafae.org/



2025年度 第2回定例研究会報告
基調講演 「クロスメディアを活用した学習研究の紹介」
尾関 智恵先生 (岐阜大学)
2026年3月7日会場:愛知大学
2026年3月7日に実施されたJACET中部支部 第2回定例研究会では、尾関智恵先生が「クロスメディアを活用した学習研究の紹介」という題目で講演され、自然言語処理に関するテクノロジーの飛躍的な発展を背景に、これらの科学技術が提供できる言語学習環境が持つ可能性について、1950年代まで遡りつつ、最先端の研究結果や事例を踏まえながら多角的に論じられた。(なお、講演で扱われたクロスメディアとは、“複数のメディアをまたいで学習体験を設計する学習”を指しており、一般的に用いられるマーケティング用語ではない点を留意されたい)。

まず、尾関先生ご自身が自己紹介に含めてお話された内容であるが、先生は岐阜大学工学部のご所属であり、ご専門も工学になる。外国語学習の観点から見れば遠い研究分野に見えるが、尾関先生の研究の発端は故三宅なほみ先生による認知科学の研究に源流があり、尾関先生ご自身が中京大学にて三宅先生に師事された経歴をお持ちである。よって、三宅先生が後に提唱された学習科学にも造詣が深く、それと密接な関係にある自然言語処理技術の果たす役割が現在の尾関先生の主な研究分野となっている。簡単に言えば、人間による言語認知だけでなく、機械(コンピューター)による言語認知をも研究対象とされていると言える。今回の講演は、これらの尾関先生の研究背景が元になっており、一般的な英語教育の知見とは異なる立場から言語学習に関するご意見をいただくことができた。文字通り学際的な観点に基づく講演であるだけでなく、英語教育の分野に留まっていては見えてこない観点を提供していただいたと感じている。

本講演の最も興味深い点は、言語学習におけるメディア(media)、すなわち、媒体となる対象が極めて多様化している点が示されたことであると言えよう。その中でも最も特徴的であった技術は、メタバースが提供できる言語学習環境の可能性であるだろう。学習者がVRゴーグル(ヘッドセット)を頭部に装着することで、インターネットが提供する360度の仮想空間に入り込み、両手にコントローラーを持ち、オブジェクトの操作や移動を行う事ができるメタバースは、学習者が別人(アバター)になった上で学習環境に入り込める技術である。外国語学習は学習者の中にもう一つ別の人格を生み出す事は以前から指摘されているが、今や機材があれば意図的に異世界に入り、自ら別人となって外国語学習に入り込める時代となった点には驚かされた。さらに、より外国語学習の実践的な面としては、教室では再現しにくい英語使用の局面、例えば、火災や自然災害などの非常事態に直面した場合、あるいは、飛行機や船舶の中での実地訓練など、必要ではあるが再現しにくい場面であっても、メタバースを用いて体験可能であり、特殊な状況における言語学習における可能性は非常に大きいと感じた。これらの技術がもたらす身体性や感覚的フィードバックが外国語習得にどのような影響を与えうるか、あるいは、仮想空間を含む多様なメディア環境が学習者の動機づけや認知処理にもたらす影響など、未研究の分野が多く、その点でも様々な可能性が示されたと感じている。
ただ、必ずしもテクノロジーが正の面を持つだけでない点も留意点とされていた事も指摘しておきたい。2020年におけるコロナショックは外国語学習をネットを介した学習に変化させた事は広く知られているが、その点が必ずしも英語運用能力に良い影響を与えたのみとは言えない。尾関氏の講演から、メディアはあくまでも媒介物であって、万能薬とはならない点も重要な点として述べられていた。英語教員が、テクノロジーに使われてしまう立場に立ってしまうのではなく、使う立場に立つ必要があるが、そうであれば、その英語教員自身が積極的に、新しい技術の中身やメリット・デメリットについて識者から学び、そのうえで活用する必要があることが示唆された。
最後に、クロスメディアを用いた教育的アプローチとして、教員自身が関心を広く持ち、外国語学習にかかわるメディア = 媒体には想像以上に多様なものある点を理解し、言語学習環境を創造するにあたり、自身が提供できる選択肢の多さを認識しておく事の重要性を感じた。ある種類の媒体を用いた学習で関心を持とうとしない学習者に対して、媒体を変えてみることで異なる側面が見えてくる事は英語教員が実際に感じることである。特に工学系の学生にとって、教員が英語学習における切り口を変える事により、急に学習動機が高まる(逆に低くなる)事は珍しいことではない。学習における媒体により学習者は多様な側面を見せる点をとしてよく理解し、テクノロジーが持つ多様な側面に基づいて学習環境を創造する必要性が提起された。一見分野外とみえる内容であっても、英語教員自身が学ぶ事により、「学生が取り組みやすくなる学習の環境づくり」の方策が示されたことで、参加された方々には刺激の多い講演になったと確信する次第である。
森 明智(東京海洋大学)

研究会報告【授業学研究会(中部)】
授業学研究会(中部)は、JACETの授業学特別委員会の発足とともに2005年に形成されました。そのため、昨年で研究会設立から20年を迎えたことになります。
本研究会は、発足当初から「実践を理論的に研究する」ことに重きを置いて活動してきました。とりわけ、その理論的基盤としては、3月の定例研究会でご講演いただいた尾関智恵先生(岐阜大学)のご専門でもある認知科学を中心に、人の「学び」にどのようにアプローチできるかを探究する「学習科学(Learning Sciences)」から多くの示唆を得てきました。
このように他領域の研究を参照しながら言語教育を考えると、さまざまな新しい発見があります。それは、領域横断的な言語研究であるApplied Linguisticsの醍醐味でもあり、言語教育研究に新たな知見をもたらすものであることを、この研究会の活動を通じて実感しています。
例えば、SLAでよく用いられる“acquisition(習得)”という語にも、さまざまな側面があります。社会文化理論に影響を与えてきたKozulin(2022)は、“acquisition(習得)”と“internalization(内化)”を次のように区別しています。詳しくは、Lantolf, Poehner, and Swain(2022)による The Routledge Handbook of Sociocultural Theory and Second Language Development をご参照ください。
Symbolic Artifact → Acquisition → Symbolic Tool
この段階では、「外部の記号的アーティファクト」は、それを「習得する」ことによってツールとして使えるようになります。しかし、それはあくまでも外部ツールを自在に使用できる段階であり、「思考」そのものにまで大きな影響を与えているわけではありません。おそらく、多くのツールはこの段階にとどまるものと考えられます。
しかし、「ことば」は常に使用され続けるため、単なる外部ツールのままにはとどまりません。Kozulinは、その次の段階として“internalization(内化)”を位置づけています。
Symbolic Tool → Internalization → Psychological Tool
すなわち、ツールを何度も使用するうちに、それが高度に抽象化され、やがて思考の枠組み、すなわち心理的ツールへと変化していく段階を考える必要があります。この心理的ツールは、スキーマに近い位置づけとして理解できるかもしれませんし、さらに言えば、アイデンティティの一部にもなっていくものだと考えられます。言語教育研究において、こうした知見は非常に刺激的です。
以上のように、学際的な視点から研究を進めることで、新たな課題や視点を見出すことができます。今後も、言語教育研究をより豊かなものにしていくことを目指しながら、「授業学研究会(中部)」の活動を進めていきたいと考えています。
佐藤 雄大(名古屋外国語大学)

掲示板:2026年度『JACET中部紀要』紀要原稿募集
『JACET中部支部紀要』第24号への掲載論文の投稿(研究論文、実践報告、書評)を募集します。
奮ってご応募ください。
締切: 2026年9月30日
刊行予定: 2026年12月
掲載料: 無料(2025年度より無料となりました)
問合せ: JACET中部支部事務局(紀要担当)
投稿方法等の詳細については中部支部ホームページでご確認ください。
JACET中部支部 紀要HP: https://jacet-chubu.org/journal/
J-stage(過去掲載された論文はこちら): https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jacetchubu/-char/ja
中部支部紀要編集委員会
事務局より
2026年度支部大会のお知らせ
第40回中部支部大会を下記の通り開催いたします。研究発表、基調講演、シンポジウムを予定しております。 詳細は支部大会のホームページに掲載いたします。
日時:2026年6月27日(土)
会場:名城大学ナゴヤドーム前キャンパス
大会テーマ:
「越境する言語使用と異文化間コミュニケーション― 大学英語教育を超えて」
基調講演:木村護郎クリストフ 氏(上智大学外国語学部 教授)
☆ 日本「アジア英語」学会 (Japanese Association for Asian Englishes[JAFAE]) 第57回全国大会(JAFAE57)との共催により開催します。JAFAE57は6月28日(日)に同会場で開催されます。JACET会員は無料で参加可能です。
2026年度定例研究会のお知らせ
☆2026年度 第1回定例研究会
日時:2026年 11月29日(日)
会場:名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト
☆2026年度 第2回定例研究会
日時:2027年 3月6日(土)
会場:愛知大学
*詳細はJACET中部支部ホームページに掲載予定です。
♦新入会員のご紹介
2026年1月から2026年4月までの中部支部所属新入会員は以下の方々です。
(敬称略、入会順)
ローレンス ジェイコブ(静岡県立大学)
酒井 日陽(名古屋市立大学(学生))
安藤 百花(名古屋市立大学(学生))
眞﨑 綾子(愛知工業大学(非常勤))
成瀬 汐七(愛知学院大学(大学院生))
山本 啓一朗(名古屋外国語大学大学院(大学院生))
♦2026年度中部支部役員(敬称略)
顧問:
倉橋洋子 (東海学園大学)
小宮富子 (岡崎大学)
吉川寛 (中京大学)
理事:
佐藤雄大 (名古屋外国語大学)
鎌倉義士 (愛知大学)
支部長:藤原康弘(名城大学)
副支部長:梶浦眞由美(名古屋市立大学)
幹事:
事務局: 藤村敬次(愛知工業大学)
会計担当:中山麻美(岐阜医療科学大学)
事務局補佐:大瀧綾乃(静岡大学)
HP担当:柴田直哉(大阪教育大学)
紀要担当:三上仁志 (中部大学)
支部研究企画委員(50音順)
石川有香(名古屋工業大学)、今井隆夫(南山大学)、内田政一(桜花学園大学)、江口朗子(立命館大学)、大石晴美(岐阜聖徳学園大学)、大瀧綾乃(静岡大学)、大森裕實(愛知県立大学)、岡戸浩子(名城大学)、梶浦眞由美(名古屋市立大学)、倉橋洋子(東海学園大学)、小宮富子(岡崎大学)、児玉恵太(椙山学園大学)、佐藤雄大(名古屋外国語大学)、塩澤 正(中部大学)、柴田直哉(大阪教育大学)、下内 充(中部学院大学)、杉浦正利(名古屋大学)、鈴木達也(南山大学)、関山健治(中部大学)、種村俊介(金城学院大学)、中山麻美(岐阜医療科学大学)、広瀬八重子(東海学院大学)、藤田 賢(愛知学院大学)、藤村敬次(愛知工業大学)、藤原康弘(名城大学)、三上仁志(中部大学)、溝口夏歩(名古屋外国語大学)、本守美織(藤田医科大学)、吉川寛(中京大学)
支部紀要編集委員会
委員長: 塩澤 正
委 員:石川有香、今井隆夫、内田政一、下内 充、杉浦正利、関山健治、溝口夏歩
♦転居・メールアドレス変更時につきまして
ご連絡のお願い
転居・転籍による所属・住所・メールアドレスなどのご変更・会員登録抹消をご希望の際には、JACET 本部事務局にご連絡ください。詳細は、以下のサイトをご覧ください。ご連絡いただいてから、支部名簿への登録・削除まで数ヶ月要する場合がございます。悪しからずご了承ください。
◆ ニューズレターは会員の皆様のフォーラムです。ご意見、ご要望等は事務局までメールでお送りください。投稿も歓迎いたします。なお、メール件名は【JACET中部】とお書き添えください。
♦ JACET 中部支部事務局
〒422-8529
愛知県豊田市八草町八千草1247
愛知工業大学 藤村敬次研究室内
JACET 中部支部 お問い合わせ
2026年6月1日発行
| 年度 | 1 | 2 |
|---|---|---|
| 2026 | No. 56 | |
| 2025 | No. 54 | No. 55 |
| 2024 | No. 52 | No.53 |
| 2023 | No. 50 | No. 51 |
| 2022 | No. 48 | No. 49 |
| 2021 | No. 46 | No. 47 |
| 2020 | No. 44 | No. 45 |
| 2019 | No. 43 | No. 42 |
| 2018 | No. 40 | No. 41 |
| 2017 | No. 38 | No. 39 |
| 2016 | No. 36 | No. 37 |
| 2015 | No. 34 | No. 35 |
| 2014 | No. 32 | No. 33 |
| 2013 | No. 30 | No. 31 |
| 2012 | No. 28 | No. 29 |
| 2011 | No. 26 | No. 27 |
| 2010 | No. 24 | No. 25 |
| 2009 | No. 22 | No. 23 |
| 2008 | No. 20 | No. 21 |
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